さんぽセンター Webひろば

独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS)

中小企業の産業保健

増木工業 株式会社

一人ひとりの社員を大切にすることで
ストレスのない健全な会社運営を推進

埼玉県新座市に本社のある増木工業株式会社は、1872(明治5)年創業の老舗企業だ。創業当時は「増田屋」として薪炭・木材の生産や雑貨を商っていたという。その後、学校や浄水場等の公共工事、マンションや戸建て、店舗等の新築やリフォーム等民間工事の分野で事業を展開する建設業と、宅地建物取引士18名を擁する不動産業を中心に発展してきた。

2022年には創業150年を迎え、さらに200年企業を目指す同社では、独自の思想により「健康経営」を推進している。そんな同社の取組について、増田敏政社長、管理部総務課の伊藤聖美課長、川井雪美さんにお話を伺った。

多様な働き方を認めるダイバーシティ経営

「最近、メンバーシップ型からジョブ型へと働き方が変わったといいますが、働き方がどうあれ、一人ひとりの社員を会社がどう見つめているか、大切にしているかが重要だと考えます。社員の健康はそのまま会社の健全につながり、会社の健全は社員、家庭、協力業者、お客様の四者すべての方々の心と身体の健康・健全につながるからです」と増田社長が語る通り、同社では多様な働き方を実現するために、各人の状況に合わせて設立した独自の制度を組み合わせる、いわばオーダーメイドの就業規則が存在する。時差出勤、時短などは当然として、「一人の人を大切にする」という増田社長の信念をベースに、後述するようにさまざまなユニークな制度をつくってきた。こうした取組が認められ、経済産業省の平成30年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選出されている。

新型コロナ禍にあっても働きやすく

新型コロナ対策を進めるなかで、同社の健康経営はさらに進化をしている。最新の取組について伊藤さんは「希望するものはテレワークを認め、会社のデータに自宅からアクセスできる仕組みをつくりました。しかし当社では現場で働く方が主力ですので、この方たちを在宅勤務にはできません。そこで電車通勤での感染リスクを考慮し、希望者にはすべての社用車を解放し自動車通勤ができるようにしました。また、電子印鑑の導入、現場での検温の徹底等も行っています。社長もiPadを使いこなす等、全社でオンライン化、クラウドによるデータの共有が進みました」と語る。

もともと直行直帰が多い同社では、現場作業員の勤怠管理がしづらいという問題があった。その対策としてiPhoneとiPadを約150台導入し、パート社員を含む全従業員に貸与している。これに出退勤アプリを入れることにより、勤怠管理が容易になったのだが、この施策が新型コロナ対策としても有効だった。

また、同社では昨年まで紙に印刷したものを使用していたストレスチェックを、今年度からiPhoneから入力する方式に変更した。これによってデータ管理が容易になり、手書きではありがちな誤記入も防げるため、社員のストレスの度合いをスピーディかつ正確に把握できるようになったのだ。

しかし、社員のストレス度は驚くほど低いと伊藤さんは打ち明ける。これには同社が行う施策の数々が功を奏しているようだ。代表的なものを紹介しよう。

社長発案、社員発案の多彩な施策

マイ・アニバーサリー休暇制度

同社では「女性が輝く職場つくり委員会」を設置、「職場環境改善」、「残業時間削減」等、さまざまな活動を展開してきた。なかでも「マイ・アニバーサリー休暇制度」は、有休を取得するのに上長の決裁ではいい出しにくい、という意見から創設されたもので、年に一度、有給休暇を3日以上連続で取得した場合に5,000円の手当が支給される。取得を申請する場合、承認は上長ではなく、所属部署内のメンバー全員の承認が必要なところがユニークだ。これは社員同士の協力体制を構築し、生産性を向上させることに役立っているという。

シェーンカムバック制度

その昔、人気を博した西部劇映画「シェーン」のラストシーンで少年が叫ぶ有名な台詞からきているそうだが、その名の通り一度退職した社員が再就職できる制度だ。現在もこの制度を使って活躍している例がある。「2010年まで不動産の管理と営業に携わっていた女性社員が、二人目のお子さんを妊娠中に悪阻がひどく、退社を余儀なくされました。しかし、出産後はこの制度によって仕事に復帰できました。お客様のことをよく知る彼女が復帰することは業務にプラスになるため、復帰は歓迎されました。お子さんが小さかった時はベビーベッドを設置してそこに寝かせたり、時にはおぶって仕事をしたこともありましたね」と川井さんは振り返る。もちろん、子育て中なので勤務時間は9時から16時までの時短となっているそうだ。

健康診断はほぼフルコース、受診率は100%

同社の健康診断項目は多岐にわたる。通常の健診項目はもちろん、希望すればCTかMRIのどちらかを選ぶことができ、骨密度や前立腺癌検査等を選択することもできる。検査内容によって自己負担は発生するが、会社の検診時にまとめて検査できるメリットは大きい。これも「早く見つけて早く治してあげたいという」という社長の思いから年々充実させてきたものだ。実際に早期発見で治療を開始、職場復帰することができた社員もいる。

現場で働く女性の環境整備

同社は女性の活躍にも力を入れており、施工管理職としてだけでなく、事務として現場に常駐する女性社員も多い。協力業者にも女性が増加しているため、各現場では可能な限り「女性専用トイレ」を設置している。安心して利用できるよう囲いをつけるなどの細かい配慮もしている。

社長と社員との密接なコミュニケーション

いまでこそ新型コロナ対策もあって希望者のみとなっているが、社長と社員との一対一の個人面談を長年続けてきた。会社の考えを一方的に押しつけるのではなく、一人ひとりの社員の言葉に耳を傾けることによって、重要なヒントをもらったことが何度もあると増田社長はいう。社長面談を楽しみにして、話す内容を事前に準備してくる社員もいるそうだ。

また、増田社長には著作もあり、会社のホームページには「社長の部屋」を設け、そこでブログを発信する等、社員とのコミュニケーションに心を砕いている。

取材時も、開放的で気さくな増田社長の気風そのままの雰囲気に包まれて、心地よくお話を伺うことができた。こうした目配り、心配りがベースとなって、同社の健康経営が自然に推し進められていることがよくわかる取材となった。

会社概要 増木工業 株式会社

事業内容: 建設業、不動産業等 設立:1946年(創業:1872年) 
従業員:76人(2020年1月現在) 所在地:埼玉県新座市