中小企業の産業保健事例

健康経営を社員の幸せ、会社の幸せ、
ひいては社会の幸せに繋げたい。

三幸土木 株式会社

愛知県日進市に本店を置く三幸土木株式会社は、創業以来55年にわたり、大手ゼネコンや官公庁から土木工事を請け負ってきた建設会社である。博物館や病院、鉄道路線、高速道路、宅地造成、河川改修、水路、上下水道工事などを幅広く手掛けてきた、地元である日進・長久手を中心に愛知県全域をカバーする地域密着型のまちづくり企業として知られている。

最近ではICT建機の導入やドローンによる測量システムなど、最先端技術も取り込みながら躍進する同社では、2015年から「社員の健康は会社の健康!」をスローガンとして、経営の柱の一つに「健康経営」を加え、毎月1回、外部顧問・衛生管理者それぞれ1名と、安全衛生担当責任者が中心となって「健康経営会議」を開催。その場で活発に議論を重ねて、さまざまな取組を展開している。
直近では2020年6月10日に全国健康保険協会愛知支部から健康宣言優良事業所「金賞」を受賞し、経済産業省の「健康経営優良法人」に4年連続で認定されるなど、健康経営に取り組む会社として数々の表彰を受けたことで、「土木工事=3K」というイメージを払拭し、ホワイト企業として人材獲得にも成功しているという同社。
健康経営への取り組みについて、同社の木下力哉社長、企画業務部宮路浩貴部長にお話を伺った。

経営トップが率先して本気で取り組む

会社として健康経営に取り組むきっかけとなったのは2014年10月、全国労働衛生週間にシニア野菜ソムリエを招いて「野菜DE生活習慣病予防」という講演を行った際、アンケートと食事記録を実施したこと。集計すると、野菜の摂取状態は100〜270g程度、昼食を日常的にコンビニや外食で済ます人が30%以上という数字が出た。さらに、2015年4月の健康診断では、40歳以上の社員の75%、役員は全員が「メタボリックシンドロームおよびその予備軍」と診断された。そこではじめたのが体重記録と毎日プラス一皿の野菜摂取を継続させる「健康行動の習慣化プログラム」。まずは木下社長をはじめとした役員グループ全員が試験的に取り組んだ結果、数値が改善されたことで、取組をすべての社員に拡大し、定着させていった。
この例からもわかる通り、同社の健康経営の特徴は経営トップが本気になって自らメッセージを発信し、実際に取り組んでいること。企画業務部の宮路浩貴部長はこう語る。
「普通の企業では総務部などの部署が担当して取り組むことが多く、なかなか経営陣が取り組むということはないと思います。しかし、弊社の場合はまず社長自らが発信する。なおかつ、社長だけでなく専務は元イタリアンのシェフという経歴を活かして、一人暮らしの社員たちに健康によく簡単な料理の作り方を一緒になって教えています。また、若手社員から「野球チームを作りたい」との声があがったときに、会社としてユニフォームや道具一式の購入を支援し、活動することになりましたが、その監督を引き受けてくれたのは安全衛生担当責任者でもある常務でした。こうして経営陣が率先して健康づくり活動に取り組む姿勢を見ていることが、社内で健康活動が盛り上がっている大きな要因だと思います」
トップが率先して取り組むと同時に、会社として成功報酬を用意して推進している施策もある。2015年から始まった「禁煙チャレンジ」では、禁煙1カ月で2万円、5カ月で10万円の成功報酬とし、公平を期すため、非喫煙者はタバコをやめたいと思っている人のサポーターになることで、10万円を支給することにした。
また、2018年7月に創設した「アニバーサリー休暇制度」は有給休暇の取得を推進するとともに家族で楽しんでもらうため、土日休みに有給休暇2日を組み合わせ、連続4日間の休暇を取った社員に、最大5万円の手当てを支給するというもの。後日、写真付きレポートを提出すれば、さらに2万円を追加する。レポートを提出するのは主に社員の奥さんが多く、力作揃いだという。
「社員を通してその家族にまでメッセージを伝えていくことが大切だと考えています。家族の応援は大きな力となりますから。健康は本人個人の問題ですが、家族の幸せを願えばより積極的になります」と木下社長。

障害があっても継続し続けることが大切

2015年に禁煙プロジェクトを始めた当時は、否定的な意見を持つ社員も存在した。
「抵抗というわけではなく、中高年の社員の中には『今更タバコをやめても遅い』と尻込みする人がいました。どうすれば参加してもらえるか考えているときに、よいきっかけになったのが厚生労働省の「スマート・ライフ・プロジェクト」でした。プロジェクトの中で活動報告をすると、ホームページにアップしてもらえますので、それを社員に見せると、多くの社員が楽しそうに活動している様子が掲載されている。そうなると『ああ自分だけがこんな後ろ向きなことをいっていてはだめだ』と気づいて参加者が増加しました」と木下社長は語る。
その後、健康経営の分野でさまざまな表彰を受けることによって、さらに積極的に参加する社員が増えていったという。自分の活動が外から評価されていることが活動への自信とモチベーションに繋がっていった。
禁煙チャレンジについては現在までに3回行っているが、それまで60%以上だった喫煙率を一時は8%にまで下げることに成功した。しかし、この数値を維持し続けることは難しいと木下社長は見ている。
「一番影響が大きいのは、途中入社した人が愛煙家だった場合、禁煙チャレンジには参加していないので、全体の喫煙率が上がってしまいます。しかも一度禁煙しても何かのきっかけでまた喫煙してしまう人もいます。毎月喫煙率のデータを取っていますが、現在は30%ぐらいに増えているようです。やめたい人を支援することはできるのですが、やめる気のない人にやめてもらうというのは非常に難しいことです。ただ、これは禁煙だけの問題ではなく健康経営全般にいえることですが、継続することこそがもっとも大事なテーマなのです。ですから数字が落ち込んでも失敗と見なすのではなく、これは継続していく上で避けては通れない課題なのだと捉えて、別のアプローチで課題解決に向かっていくことが重要だと考えています。禁煙チャレンジについては現在アンケートを実施していますので、その中から少しでもやる気のある社員を探して支援したいですね」と木下社長はあくまで前向きに語った。

会社概要 三幸土木 株式会社
事業内容: 土木建築工事一式、建築資材の販売、産業廃棄物処理業等 設立:1987年(創業:1965年) 従業員:93人(2020年6月現在)
所在地:愛知県日進市

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