未払賃金の立替払事業

令和2年12月25日以降は、請求書の押印(請求書1か所、退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書1か所)がないものについても受け付けております。

I 未払賃金の立替払制度の概要


制度概要 ①「未払賃金の立替払制度のご案内」(パンフレット(2.56MB)
②未払賃金の立替制度の概要(リーフレット(72.4KB)

・未払賃金立替払制度を解説したパンフレット及びリーフレットです。
 パンフレットがダウンロードできない場合には、労働基準監督署にもありますのでお問い合わせください。

Ⅰ 立替払を受けることができる人
   立替払を受けることができる人は、次の要件を満たしている方です。

   労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていた事業主(法人、個人は問いません。)に雇用され、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者(労働基準法第9条の労働者に限る。)であった方





   裁判所への破産手続開始等の申立日(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長に対する事実上の倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年の間に当該企業を退職した方
  (注) 退職後6か月以内に裁判所への破産手続開始の申立て又は労働基準監督署長への認定申請がなされなかった場合は、立替払の対象とはなりません。

   未払賃金額等について、破産管財人等の証明(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長の確認(事実上の倒産の場合)を受けた方

労災保険の適用事業
   労働者災害補償保険法の規定が適用される事業をいいます。労働者を1人以上使用する事業であれば、農林水産業の一部を除いて、すべて該当します。
   なお、同居の親族のみを使用する事業は、適用事業に該当しません。
 
労働者(労働基準法第9条の労働者に限る。)
   倒産した事業主に雇用され、労働の対価として賃金の支払を受けていた人をいいます(パート・アルバイト等も含みます。)。同居の親族については、その同居の親族がたとえ事業場で形式上労働者として働いている体裁をとっていても、一般的には実質上事業主と利益を一にし、事業主と同一の地位にあると認められ、原則として労働者とは認められません。
   なお、家内労働法による内職等に従事する家内労働者は対象になりません。
   また、代表権を有する会社役員等は対象になりません。

立替払の対象となる倒産
(1) 法律上の倒産
   破産手続開始の決定(破産法)・特別清算手続開始の命令(会社法)
   再生手続の開始の決定(民事再生法)・更生手続開始の決定(会社更生法)
 
(2) 事実上の倒産(中小企業事業主のみ)
   企業が倒産して事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合
  ア)「事業活動停止」とは
     事業場が閉鎖され、労働者全員が解雇されるなどにより、その事業本来の事業活動が停止した場合をいいます。事業の廃止のために必要な清算活動を行っているに過ぎない場合は該当しますが、事業規模を縮小してもその事業本来の事業活動を継続している場合は該当しません。
  イ)「再開の見込みなし」とは
     一般的には、事業主が事業の再開の意図を放棄し、又は清算活動に入るなどにより再開する見込みがなくなった場合をいいます。
  ウ)「賃金支払能力なし」とは
     一般的には、事業主に賃金の支払に充てられる資産がなく、かつ、資金の借入れ等を行っても賃金支払の見込みがない場合をいいます。負債額が資産額を上回る、いわゆる債務超過であることのみでは該当しません。
   
   なお、中小企業事業主とは、以下のいずれかに該当する事業主をいいます。
           
     

 立替払の請求ができる期間
   立替払の請求ができる期間は、破産等法律上の倒産の場合は裁判所の破産手続の開始等の決定日又は命令日の翌日から起算して2年以内、事実上の倒産の場合は労働基準監督署長が倒産の認定をした日の翌日から起算して2年以内です。この期間内に未払賃金の立替払請求書を機構に提出しなければならず、期間を過ぎた場合は立替払を受けることができません。

Ⅲ 立替払の対象となる未払賃金
  立替払の対象となる未払賃金は、退職日の6か月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している「定期賃金(※1)」及び「退職手当(※2)」です。ただし、未払賃金総額が2万円未満のときは対象外です。

 
※1
定期賃金
   労働基準法第24条第2項に規定する、毎月1回以上定期的に決まって支払われる賃金(例:基本給・家族手当・通勤手当・時間外手当等)で、所得税、住民税、社会保険料等法定控除額を控除する前の額になります。
 
※2 退職手当
   退職手当は、労働協約、就業規則(退職金規程)等に基づいて支給される退職金をいいます。事業主が、中小企業退職金共済制度等の社外積立の退職金制度に加入し、他制度から退職金が支払われる場合は、支払われる額の確定を待って、その額を差し引いた額が立替払の対象になります。
 
※3 日割計算について
   月給制(欠勤しても賃金が減額されない完全月給制を含みます。)において、退職日が賃金計算期間の途中の日である場合は、退職日以前の労働に対応する部分につき日割計算した額になります。
<日割計算の方法>
 就業規則等で具体的に定められている方法により計算しますが、定められていない場合には、出勤日数に応じて計算することになります。
 「日割計算した賃金額」=「月給及び月決めの各種手当(役職手当・家族手当・通勤手当等)」×「実労働日数」÷「所定労働日数(月によって所定労働日数が異なる場合は、年間所定労働日数を12月で除した平均所定労働日数)」
 
※4 立替払の対象にならないもの
   賞与その他臨時的に支払われる賃金、解雇予告手当、賃金の延滞利息、年末調整の税金の還付金、慰労金・祝金名目の恩恵的又は福利厚生上の給付、実費弁償としての旅費・用品代等は立替払の対象にはなりません。
 
※5 未払賃金から差し引かれるもの
 支払われるべき定期賃金及び退職手当のうち既に支払を受けた場合や事業主の債権に基づき毎月の賃金から差し引かれている社宅料、会社からの物品購入代金、貸付金、返済金等がある場合は、未払賃金から差し引かれた後の額になります。


Ⅳ 立替払される金額
   立替払される金額は、未払賃金総額の100分の80の額です。ただし、立替払の対象となる未払賃金総額には、退職日の年齢による限度額があり、その限度額を超えるときは、立替払される金額は限度額の100分の80となります。

例1 退職日の年齢32歳、未払賃金総額170万円(定期賃金50万円、退職手当120万円)の場合
   未払賃金総額の170万円が、30歳以上45歳未満の限度額220万円を超えていないので、立替払額=170万円×0.8=136万円となります。

例2 退職日の年齢48歳、未払賃金総額470万円(定期賃金150万円、退職手当320万円)
   未払賃金総額の470万円が、45歳以上の限度額370万円を超えているので、立替払額は、立替払の上限額296万円となります。

Ⅴ 立替払の請求手続
   「法律上の倒産の場合」と「事実上の倒産の場合」では、請求手続が異なりますので、ご注意ください。
法律上の倒産の場合の請求手続

(1)
 立替払請求者は、裁判所・以下の倒産の区分に応じた証明者に対して、立替払請求の必要事項についての証明を申請します。




(2)  裁判所・破産管財人等証明者から証明書が交付されたら、立替払請求者は、「立替払請求書」及び「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申請書」に必要事項を記入し、証明書と切り離さないで機構に送付してください。

(3)  立替払請求の必要事項の全部又は一部について証明を裁判所・破産管財人等証明者から得られなかった場合は、立替払請求者は、労働基準監督署長に対して、証明を得られなかった事項について確認申請ができます。
 なお、詳細については、疎明資料や証明者から交付された証明書等を持参の上、最寄りの労働基準監督署にご相談ください。



事実上の倒産の場合の請求手続

(1)  立替払請求者は、労働基準監督署長に対して、当該事業場が事業活動を停止し、再開の見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったことについて認定の申請を行います。認定の申請は、当該事業場を退職した立替払請求者が2人以上いる場合は、そのうちの1人が認定を受ければ足り、その効果は他の退職労働者にも及びます。

(2)  労働基準監督署長から認定通知書が交付されたら、立替払請求者は、労働基準監督署長に対して、立替払請求の必要事項についての確認の申請を行います。

(3)  労働基準監督署長から確認通知書を交付されたら、立替払請求者は、「立替払請求書」及び「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申請書」に必要事項を記入し、確認通知書と切り離さないで機構に送付してください。
    
船員に係る立替払の請求手続
   船員法第1条に規定する船員については、「立替払請求書」の提出先が地方運輸局になりますので、ご注意ください。


1 法律上の倒産の場合
(1)


 立替払請求者は、破産管財人等の証明者に対して、立替払請求の必要事項についての証明を申請し、証明書が交付されたら、立替払請求者は、「立替払請求書」及び「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申請書」に必要事項を記入し、証明書と切り離さないで地方運輸局に送付してください。
 
(2)



 立替払請求の必要事項の全部又は一部について証明を破産管財人等証明者から得られなかった場合は、立替払請求者は、地方運輸局長に対して、証明を得られなかった事項について確認申請ができます。詳細については、疎明資料や証明者から交付された証明書等を持参の上、最寄りの地方運輸局にご相談ください。

 2 事実上の倒産の場合
(1)


 立替払請求者は、地方運輸局長に対して、船員手帳を提示の上、認定の申請を行います。認定通知書が交付されたら、地方運輸局長に対して、船員手帳を提示の上、立替払請求の必要事項についての確認の申請を行います。
(2)


   地方運輸局長から確認通知書を交付されたら、立替払請求者は、「立替払請求書」及び「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申請書」に必要事項を記入し、確認通知書と切り離さないで地方運輸局に送付してください。


Ⅵ 立替払金の支払
   機構は、提出された「未払賃金の立替払請求書」を審査し、支払が決定した場合に、未払賃金立替払決定支払通知書(退職所得に関する源泉徴収票・特別徴収票を含む。)を請求者に送付し、請求者が指定した請求者本人名義の普通預金口座に立替払金を振り込みます。
 なお、立替払金は、定期賃金分、退職手当分のいずれも、租税特別措置法第29条の4の規定により退職所得として取り扱われ、他の所得と分離して課税されます。ただし、退職所得については、下記のとおり、退職所得控除が認められていますので、立替払請求書下欄の「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に記入がある場合は控除が受けられます。


Ⅶ 不正受給が行われた場合
    偽りその他不正の行為により立替払金を得た場合や、事業主が不正に加担し偽りの報告又は証明をしたため立替払金が支払われた場合には、それらの行為により立替払金を得た者及びそれに加担した者に対して詐欺罪として刑事告発を行うこととなります。
 また、偽りその他不正の行為により立替払金を得た者や、それに加担した事業主については、国から、立替払された金額の返還及びそれに相当する金額の納付(いわゆる倍返し)が命じられることとなります。

Ⅷ 立替払金の求償
1 求償権の行使
   立替払を行ったときは、機構は、民法第499条の規定により、立替払金に相当する金額について立替払を受けた労働者の賃金請求権を代位取得します。
 機構は、国の債権管理等に関する法律に順じ代位取得した賃金債権により、事業主等に対して求償を行います。
 具体的には、法律上の倒産の場合は、破産管財人等に対して、当月内に立替払した分をまとめて翌月上旬に代位取得及び支払内容を通知し、破産管財人等から賃金債権の裁判所への届出の回答を受け取った後、翌月末までに破産債権届出書又は破産債権名義変更届出書を裁判所へ提出します。事実上の倒産の場合は、事業主に対して、当月内に立替払した分をまとめて翌月上旬に支払内容を通知するとともに、賃金責務の弁済を請求します。機構から立替払があったからといって、事業主は賃金支払義務を免れるものではありません。
 
(1) 破産・会社更生の場合
  ア)破産管財人又は管財人に対して、賃金債権の代位取得を通知
  イ)裁判所に対して、債権の届出又は債権者名義変更の届出を行い、破産手続に参加
  ウ)財団債権の弁済、優先的破産債権の配当

(2)
民事再生・特別清算の場合
  ア)再生債務者(管財人)又は清算人に対して、賃金債権の代位取得を通知及び弁済の請求
  イ)再生債務者(管財人)又は清算人に対して、債務承認書、弁済計画書の提出依頼及び弁済の請求
 
(3) 事実上の倒産の場合
  ア)事業主に対して、未払賃金立替払の通知及び賃金債務の弁済請求
  イ)弁済の督促
  ウ)必要に応じ、差押え、仮差押え、抵当権の設定、民事訴訟の提起による賃金債権の保全
 
2 立替払金の充当について
 立替払金の充当の順位は、民法第488条及び機構業務方法書により、退職手当に充当し次に定期賃金に充当します。その際、定期賃金に弁済期が異なるものがあるときは、それぞれ弁済期が到来した順序に従い充当します。
 なお、破産手続においては、機構の立替払金は、弁済期が同じ債権については、労働者の賃金請求権と同一の性質を有するため、実務上、財団債権部分と優先的破産債権部分の比率に応じて按分する取扱いとしています。


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