海外勤務にまつわる健康管理のあれこれ

海外勤務にまつわる健康管理のあれこれ
-海外で活躍する人々の健康をサポートする-

1 時代はグローバル社会
いざ海外勤務をすることになったら

情報が国境を自由に越えるボーダレスな情報化社会といっても、日本にいながらのバーチャル(仮想現実)なものです。それがある日、海外勤務の話が持ち上がり、実際に外洋を渡ることになったら…。
今、そういう人たちが業種や事業規模にかかわらず増えています。

3か月以上の長期にわたって海外に滞在している日本人は約53万人

海外旅行は、今の日本ではありふれたことになりましたが、「海外に住んで仕事をする」となると話しは別です。
2000年のわが国の雇用者数5,356万人(労働経済白書)と単純にくらべると、海外に3か月以上滞在する53万人(外務省)は、ちょうど1%になります。さらに、短期の出張をする人などを合わせると、かなりの人数となると考えられ、海外勤務者の健康管理問題は意外に大きな課題と言えます。

海外生活での健康問題

健康問題、特に病気やけがのとき、あるいはその予防を赴任地ではどうしたらよいのか。ご本人のみならず、ご家族や派遣元企業の担当者を含めた多くの方々の悩みです。
勝手の違う異文化のなかで、外国の人達を相手に生身の自分をコントロールしながら仕事や生活をすることは、多くの人々にとって大変なプレッシャーです。自他ともに満足すべき仕事の成果をあげ、ステップアップして帰国するためには、どうしたらよいのでしょうか。
労働者健康福祉機構では、海外赴任される方々の出発前・赴任中・帰国後までを一貫して、健康保持の面から支援するための様々な事業を行っています。そこで、海外勤務にまつわる様々な健康管理についてご紹介いたします。
2 海外赴任が決まったら
健康診断
…海外勤務健康管理センター(JOHAC)ほか(※JOHACは平成22年3月に廃止されました。)

海外勤務の健康管理は、派遣前に健康診断(注1)を受けて状態をチェックし、必要なアドバイスや予防接種を受けることや赴任地の医療、健康管理に関する情報収集を行い、携行品や心の準備をすることから始まります。

(注1) 海外に6か月以上派遣される方や6か月以上の海外勤務を終了して帰国された方々の健康診断は、法令(労働安全衛生規則第45条の2)で定められています。

この健康診断は、新横浜駅近くの横浜労災病院の敷地内にある海外勤務健康管理センター(JOHACジョハック Japan Overseas Health Administration Center)のほか、全国の労災病院や附属の健康診断センター、または、所定の健康診断項目を実施できる施設であれば受けられます。

事前情報
…JOHACのホームページ(※JOHACは平成22年3月に廃止されました。)

現地における感染症などの病気予防の心得や医療システム、医薬品などについて、あらかじめ情報を得ておくと安心です。
JOHACのホームページ(注2)では、「海外赴任者のための健康管理ガイドブック」(平成12年版)の内容をはじめ、様々な情報がアップされています。
トップページから主な情報をご紹介しますと、
◎健康診断のほか、予防接種のご案内
◎海外勤務者のための医療・衛生情報
・地域別情報(注3)
・海外の医療(注4)
・感染症(生活上の注意、予防接種ほか)
・海外の市販(大衆)薬
◎出版物
・海外赴任者のための健康管理ガイドブック
・海外感染症通信(1995.5~1999.3)
・海外勤務と健康(1995.3~最新版)
・海外薬剤情報(薬剤師調査報告)
◎ビデオ
・地域別の医療情報ビデオ(注5)

(注2) http://www.johac.rofuku.go.jp(※JOHACは平成22年3月に廃止されました。)
(注3) 「地域別情報」には、国別と巡回都市別の医療情報があります。特に、巡回都市別は次節の「3赴任地で」の巡回健康相談を行った都市の最新医療情報を掲載しています。
(注4) 現地での受診の心構えの他、「海外医療調査」では、1993~96年にかけて現地の日本人会に依頼して、日本人がよく利用する医療機関をリストアップしていただいたものを掲載しています。
(注5) 「海外薬剤情報」とともに、各労災病院および健康診断センターに配置しているほか、JOHACにて実費で配布しています。
3 赴任地で
体の具合が悪いので相談したい
…FAX、E-mailによる健康相談

気候、風土、言語、考え方、社会の慣習など、異なる環境に慣れるまでは、なかなか大変です。そのために起こるストレスや生活習慣病の増悪もありえますし、衣食住や育児も軌道に乗るまで苦労の多いことと思います。
JOHACでは、健康に関する国内外からのFAXによる個別相談を受け付け、専門スタッフ(専門領域によっては労災病院のスタッフ)が数日以内に返答しています。参考意見としてご活用ください。
FAXには、ご本人の年齢、性別、職業、赴任国・都市、赴任期間(帰国予定含む)、赴任目的とともに、回答送付先の氏名、電話番号、FAX番号、E-mailアドレス、会社名を明記の上、相談内容を具体的にお書きください。また、診断書や持病、特殊事情がある場合もお知らせください(注6)。

相談内容は、1.予防接種の必要性など現地の医療事情や2.赴任に同行されたご家族、特に子供さんの健康に関すること、3.ストレスやメンタルヘルスに関するお問い合わせが多いようです。
また、JOHACでは、海外赴任者の健康管理に携わる方のフォーラムを開催し、E-mailによる相談も受け付けています(注7)。ご利用ください。


日本人の医師や看護婦に直接相談したい
…海外巡回健康相談

当事業団では、労災病院の医師2名・看護婦など計4名で構成される海外巡回健康相談チームを編成して、アジア、中近東、アフリカ、中南米および東欧の各地に、(財)海外邦人医療基金(URL http://www.jomf.or.jp/)の協力を得て、年間14チームを派遣し(実績別表)、現地で勤務されている日本人とその家族の方々の健康相談を無料で行っています。
現地では、健康相談(一般問診、メンタルヘルス問診)、健康指導、検尿(糖、蛋白、潜血)、血圧測定に加えて、医師の判断により、心電図検査、血糖検査のほか、一般的な医薬品の提供も行います。
また、相談者の希望(要事前予約)により、ぎょう虫検査、寄生虫検査、自己採取法による子宮けい癌検査を行っています。
図表にありますように、巡回都市は開発途上地域が中心ですが、現地の日本人会等からの要望などを踏まえ、毎年見直しを行っています。
なお、海外巡回健康相談の訪問都市および日時は、当事業団のホームページの「海外派遣労働者の健康管理事業」(注8)から、ご覧になれます。

(注8) http://www.johas.go.jp/kinrosyashien/kaigai2.html#anchr2

市販薬品や処方薬品の信頼性は
…医薬品情報

外国で購入又は処方される医薬品は日本人には強すぎる、ということがよく言われます。
このような不安や疑問を軽減するため、当事業団では、市販薬品の具体的な情報を提供するために、現地で入手できる医薬品の調査を順次行って公表しております。
その内容は、印刷物(海外薬剤情報)のほかに、ホームページでもご覧いただけます(注2または8のURLにアクセスしてください)。

病院にかかる
…海外労災友好提携病院

怪我をしたり体調が悪くなったりすると、どうしても病院にかかる必要が出てきます。良い病院はどこか、どうやってかかるのか、予約はどうするのか、ちゃんとした医療を受けられるのか、いろいろと心配になります。(注3、注4)
開発途上国で勤務をされる方々が、現地で医療を受けやすい環境を確保するため、当事業団と人材の交流等を行っている外国の医療機関(労災友好提携病院)があります(注9)。
これらの病院の医師や看護婦を日本に招いて、日本人が通常接している医療水準や環境について知ってもらうことを主とした研修・交流を、JOHACを中心に労災病院がバックアップしながら進めています。

4 帰国後は
健康診断を忘れずに

新たなステージへ向けて整理と準備に何かとお忙しいことと思いますが、帰国後の健康診断は忘れずに受診しましょう。

海外医療情報の共有化を
また、赴任にあたってこうすればよかった、これだけは伝えておきたい、こういうのがあると良かったが…、といった情報は、関係者にわかるようにしておくとともに、JOHACや当事業団のホームページにもご一報ください(注7)。広くご紹介したいと思います。

(海外医療業務室)
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