粉じん作業とその対策(労働衛生の基本⑯)

粉じん作業とその対策

 粉じんが発生・浮遊する粉じん作業場や粉じん作業において、その粉じんを吸入して発症する「じん肺」は、現在においても根本的な治療法がなく、その予防が最重要かつ根本的な対処法であるといえます。
 粉じん作業は製造業や鉱業、建設業に多く、予防では、①粉じんを発生させない(=作業環境の改善)、②粉じんの拡散を防止する(=換気対策の実施)、③粉じんを吸入しない(=呼吸用保護具の適切な使用)といった3大対策が基本となります。
 近年は、これらの予防策が徐々に効果を上げ、重症のじん肺患者数は確実に減ってきています。
一方で、10年以上の経過で発症するじん肺が多く、転職や離職等が課題となっています。今回は、粉じん作業とその対策について振り返ります。
1.粉じん作業と健康障害
 粉じん作業やじん肺に関する法令には、労働安全衛生法、労働安全衛生規則に加えて、じん肺法と粉じん障害防止規則等があります。じん肺法第2条では、じん肺とは粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病と定義されています。「線維増殖性変化」というのは、肺が遺物である粉じんを吸入し続けてしまった時に生体の対処能力を超え、結果として肺に不可逆的な変化が発生した状態を意味します。この状態がじん肺であり、発症まで10年以上の経過をたどることもある上、根本的な治療法は現在においても確立されておらず、ひとたび発症すれば悪化させないことが治療の目標となります。そのためには、さらなる粉じんばく露の回避に加えて、禁煙と感染予防が大切です。 また、じん肺と密接な関係のある疾病を合併症と呼び、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がんの6種類の合併症が認定されています。これらの疾病はじん肺と因果関係があり、労災認定との関連とともに、治療の対象となります。
 表1には随時申請は含まれていませんが、じん肺の新規の労災認定件数や有所見者数は、徐々に減少してきています。粉じん作業に従事する労働者数が減っていないことを考慮すれば、予防に重点を置いた各種の対策が新規患者数の現象という効果を着実に上げてきているといえます。これらは、企業における法令の遵守とともに、粉じん障害防止総合対策等を通して、じん肺患者数の多い作業を、政労使の協力のもと、重点的に対策を進めてきた成果ともいえうでしょう。
 一方で、じん肺の発症には10年以上の年月を要することも多く、離職後等の随時申請による管理区分4の患者数は111名、合併症罹患患者数は84名(いずれも平成28年)と労災認定の多くを占めています。


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